中国伝統医学(中医学)では、疼痛の病因に対する認識は長期の医療実践と臨床経験の積み重ねによって構築されてきました。一般的に、疼痛を引き起こす原因には、[外因]と[内因]があります。

外因は

外傷外邪七情内傷疫気飲食不節過労 など6つがあります。

① 外傷
例えば、銃弾傷、切り傷、捻挫.やけど、凍傷などです。
② 外邪
風、寒、暑、湿、燥、火6種類の外部からの邪気を指します。六気、六淫とも呼ばれます。もし「六気」が異常になって、人体の正気不足と抵抗力が下がると、六气は病気の要素になり、そして人体を侵入して疼痛が発生することになります
例えば、関節痛、生理痛、顔面神経痛、麻痺等
③ 七情内傷
七情とは、喜・怒・思・憂・悲・恐・驚の7種類の感情の変化を指します。急な精神的衝撃や、長期間に及ぶ持続的な精神への刺激は、直接内臓機能に影響を与え乱れを起こし、さらには疼痛のひきがねともなります。
例えば、両脇の痛み、胸の痛み、頭痛、肩、背中の痛み等。
④ 癘気
「癘気」(疫癘)とは中医の文献の中で“癘毒”.“毒気”などと称します。その特徴としては、強烈な伝染性の病邪を持ち、急速に発病します。また病状は極めて重く、激痛を伴い、伝染性の強さなども挙げられます。
例えば、激しい頭痛、顔面痛と咽喉部痛等。
⑤ 飲食失調
飲食は栄養を摂取し、人体の生命を守る為に不可欠な物質です。しかし飲食失調、飲食不潔、或いは飲食偏癖の習慣を重ねていると、疼痛を引き起こす原因になります。
例えば、食べ過ぎや偏食…《生もの、冷たい物、脂物、甘い物、辛味の強い物等》の過食は、脾胃を傷め、胃痛の原因となります。この他、暴飲暴食、飲食不潔は、色々な胃腸の疾病を引き起こし、腹痛、吐瀉等の病症も現われます。
⑥ 過労
「労」とは、精神的・肉体的な過労を意味します。この中には、肉体的過労・精神的過労・性行為の過剰等も含まれます。過労や節度のない生活は、疼痛発生の原因となります。
例えば、過労は気を消耗し全身の機能低下を起こします。心労は、心神を消耗し、脾の運化を障害し、失眠症、狭心症を誘発します。又、性行為の過剰は、腎精を消耗させ、腰、背中の痛みを引き起こす原因となります

内因は主に正気不足です。
正気不足により起こる5つの失調。

① 生理機能 ② 経絡機能 ③ 気血機能 ④ 臓腑機能 ⑤ 津液代謝機能 などの失調です。

中国の医学古典には、「邪之所湊、其気必虚」(邪気が集まるには必ず正気が虚にしている)、また「正気存内、邪不可干」(正気が内にあれば邪気は入り込まない)と記載されています。
つまり、疼痛の内因は主に機体の正気不足といえます。人体の気血、経絡、臓腑の生理機能の失調、抵抗力の低下により、様々な疼痛の発生に繋がるのです。

『疼痛症』について③