針灸による「未病」の臨床治療は、中国で数千年来常用され、著しい効果をあげてきました。

針灸法 『治未病』中国医学の古典《黄帝内経》には「聖人不治已病治未病」聖人は已病(いびょう)を治(ち)せず未病(みびょう)を治(ち)す(すでに病気を治せず、いまだ病まざるを治す。)

聖人は己病(=既病)をなおすのではなく、未病を治すと記載されています。

「治未病(ちみびょう)」とは、まだはっきりとは病気にならないうちに治してしまうという意味で、要するに病気を未然に防ぐ治療のことであり、病気にならない健康な身体を作ると言う事ですことでもあります。近来よく言われる病気を未然に防ぐという観点は中国医学の思想です。これは最近よく言われる主に病気を「未然」に防ぐ中国医学と言う理論的な観点でもあります。
科学の進歩に伴い、疾病の医学は健康な医学に転じ、以前は病気にむしばれ人々の群れが、やがては病気を知らないすこやかな人たちの集まり変わって行くことになります。
数千年来の中国医学の「治未病」と言う考え方は現代の医学の思想をリードしています。
これはからも更に重んじられてゆくと思われる「治未病」の考えかたについて
①「未病先防」、
②「早期防治」、
③「已病防変」、
④「保健延衰」
の4項目に分けて説明します。

「未病先防」(病気になる前に予防する)

未病とは病気と言うほどではないけれど、病気へと向かっている状態を言います。健康と疾病の間に截然たる境界線があるわけではなく、真ん中に唯1つの亜健康な状態が存在しております。いわゆる亜健康な状態は体内に異常な変化があったにもかかわらず、病気の徴候はまだ現れていません。
亜健康な状態の兆しは二つの方向があります。
その一つは健康な状態に向かい、もう一つは疾病の状態向かいます。
したがって、いつでも予防養生に注意し、正気(正気とは人体の抵抗力、自身の修復能力、環境に対する適応能力と言う意味です)を扶助して、機体の免疫力を高め、疾病を予防することが非常に大切です。

「早期防治」(初期に予防治療する)

《黄帝の内経》の中で “上工救其萌芽”と書かれている。つまり、疾病の徴候が現れて、あるいは芽生えの状態の時には、有効的な処置をとり、初期の予防と治療を行うべきなのです。臨床の上で脳卒中類の病気は多数に前兆の病状があります。例えば、強い頭痛にはきけ(嘔気・嘔吐)を伴って、片側の手足の感覚がなくなる、あるいはしびれ、脱力感、まひなどの前兆の症状が現われたら、直ちに予防治療の処置を取れば、脳卒中の発生を免れることができるのです。

「既病防変」(既病の病状の変化を防止する)

古代医学者の張仲景は《金匱要略》の中に、“適中經絡,未流傳臟腑,即醫治之”と論じている。すなわち、疾病の初期の治療を強調し、疾病の悪化を防止することができで、その上に治愈をしやすいのであります。これとは逆に、初期治療しなければ、病邪(おおよそいろんな病気を引き起こす要素およびその病理による損害をさす)は強く、病状が重くになるため治療が難くなります。
したがって、初期の予防治療をすることはとても重要であります。

「保健延衰」(健康を保つ、老衰を防ぐ)

明朝の医学書《鍼灸聚英》には“無病而先針灸曰逆,逆未至而迎之也。”(人体は無病の時、あるいは疾病が発生する前に鍼灸法を応用して、経絡の気を奮い立たせることができ、人体の抗病能力と対応能力を強め、それによって疾病の発生を防止して、健康と長生きを促進する。) と書かられています。
当面、世界の人口は次第に高齢化に傾いて、病気の予防と健康を維持するのはとりわけ重要であります。針灸法“治未病”は臨床での常用な方法であり、その治療の効果が著しいため、数千年以来衰えません。針灸法“治未病”は人体の陰陽の平衡を改善でき、機体の免疫と病気の抵抗力を強めて、臓腑と神経内分泌の機能を調節でき、人体の新陳代謝を促進し、長生きするためには大きな効力を発揮されます。

これからの医学は“疾病”の医学の学問の時代ではなく、社会科学の進歩に伴い,“健康”の医学の学問に移行して行くべきなのです。“既病”の治療は疾病の発生後にやむを得ない処置で、“消極的な医学”であります。“治未病”は病気を未然に防止し、健康を維持する積極的な処置と言えるでしょう。治療するよりは予防を主にする方が大切の考え方であり、中医学と西洋医学の共通の認識だと思います。