経絡

「経脈者,所以能决生死,処百病,調虚実,不可不通。」
(経脈は生死を決し、百病を処す、虚実を調整、通じるべきである。)
                   《霊枢・経脈》


経絡
◆ 経 絡 ◆
 

針灸について言及すると、“経絡”のこの2つの文字が関わって来ます。西洋医学では神経と血管を言い、中国医学では経絡を言います。神経と経絡はすべて人体の調節システムです。神経と血管は見えるし、つかむことができますが、経絡は見えず、同じくつかむこともできません。数十年来、経絡の研究者のエリート達が現代の先進的な技術を応用しても経絡の実質性の構造はまだ明確にされていません。皆さんは何気なく質問します、「本当に経絡があるのですか?もし経絡があれば、何故、目に見えず探り出せないのですか?」
まず、ここではっきり言いたいことは、見えざる、つかめないものは絶対に存在しないのですか?答えは、そうではありません。自然界の中で、見えなく、つかめないものは至る所すべてにあります。たとえば“風”、木の枝は風に吹いて揺られていますが、あなたが目に見えているのは、”風”に吹かれて揺れている木の枝だけです、風ではありません。しかしあなたは木の枝が風に揺られて左右されていることを分かっているけれども、風の実体についてははっきり分かりません。あなたは“風”が存在していないと言えるのですか?

経絡とは経脈と絡脈の総称です。中国医学、針灸学の中での特有な名詞と概念で、人体内の気血の運行の通路であり、内は臓腑に属し、外は全身に分布し、各部の組織と器官をつなげて一つの有機的な総体になっています。

「経」は経脈を指し、直通する経路のようで、経絡システムの中の主幹です。
「絡」はネットワークのように、経脈の小さな分枝です。
経絡系統的な内容は12経脈・奇経8脈・15絡脈・12経別・12皮部などを含みます。
経絡学説は12経脈を主として、全身内外に分布し、気血を循環し、臓腑と皮肉筋骨を潤し、各部の機能の活動を正常に行わせて、そして相対的な平衡を維持します。正気は経絡の上からめぐることができますが、しかし、邪気も経絡の上から伝変することもできます。どの部位でも経絡が通じなければ、その部位は病気にかかります。

[正気]とは人体の正常な機能の活動の総称です、つまり人体の抵抗力、及び、自己調節の能力、環境に順応する能力、自然治 癒力と健康を取り戻る能力と言う意味です。
[病邪]とはおおよそいろんな病気を引き起こす要素およびその病理による損害をさす。
[伝変]とは中国医学では病邪、あるいは病変の転移と変化の呼称です。

《霊枢・経脈》に「経脈者,所以能决生死,処百病,調虚実,不可不通。」(経脈は生死を決し、百病を処す、虚実を調整、通じるべきである。)と述べています。経絡理論は古人による長期にわたる臨床の実践の基、総括されたものなのです。この理論は臓腑、気血などの基礎理論とともに、中医学の各科において特に針灸の臨床弁証と治療することにおいても、きわめて重要な指導的な意義を持っています。

2010/07/19